東京異聞を読んだ。
明治29年の東京を舞台としつつ、人でないものに人が襲われることが日常的に存在し、そこに暮らす人々もそれを認めているという、小野不由美独特の世界観の中、華族で元五摂家のひとつ鷹司家の家督争いを軸に、人でないものの仕業を思わせる事件と、それを人の仕業と考え謎を解いていく記者の物語である。
全体を俯瞰している語り部がいるのだが、その口語体がどうもわかりづらく読みづらく感じた。
私は、あまり女流作家というのは読まないのだが、小野不由美に関しては、魔性の子から始まる十ニ国記シリーズのファンだ。魔性の子自体読んでも、なんだかよくわからない部分が多かったのだが、それを書いた時に十二国というパラレルワールドを思いついたらしく、まったく破綻することない小野不由美の頭の中の異世界というのに感嘆した。読んでもらえばわかると思うのだが、先に魔性の子ありきとは思えないのだ。十ニ国記があって、それをこちら側から見たバージョンとして、後から書かれたのなら納得なのだが。
いずれにしても、まだ六国記ぐらいしか書かれていないので、続編を期待している。なにより、主役の高里が行方不明のままだし…。ほんと、余計な作品ださずに、専念してもらいたい(笑
ついでに書くと、昨年は一つの村が吸血鬼に乗っ取られていく物語、屍鬼シリーズ5巻も読んだのだが、これも人でないものがいる世界なのに、とても現実的で超常現象は起きないという、やはり小野ワールドな作品であった。